「─── ねぇ、お水も入れるの?」
12月も半ばを過ぎた頃。
お線香の束を持ったまま振り返れば、独特の香りが鼻孔をくすぐった。
「少しだけね。雨も降ってるし、あんまり入れても仕方ないから」
左手に傘、右手に柄杓を持ち、今まさに水を注ごうとしている姿を目に入れ、「そっか」と相槌を打った。
空からは、しとしとと雨が落ちてくる。
拡げた透明のビニール傘に弾かれて、雫が先程から楽しそうに踊っていた。
「それよりも、学校は大丈夫? 間に合う?」
「うん、大丈夫。今日は、検査結果を聞きに行くから午後中いっぱい休むって担任の先生には伝えてあるし、午後からの授業には十分間に合う時間だし」
「それならいいけど……本当にビックリしたんだから」
「……うん。心配掛けて、ごめんね」