そもそも屋外で、風が強く吹いていたのに、どこかに飛ばされていないわけがない。



「ハァ……もう、さい……っあく」



言葉ではそう零しながらも、私は一縷の望みにかけて、昼休みに屋上へと向かった。

もしかしたら、運良くどこかに引っ掛かってくれている可能性だってなくはないし……

何より、進路表を無くしただなんて昨日の今日で担任の先生に言えるはずもない。

昨日散々怒られたのに、また今日もお説教で昼休みの大半を終えるだなんて、それこそツイてない。


鉛のように、重い足。

一歩一歩、バーベルを持ち上げるように階段を登り、今日も鉄の扉を押し開けた。


その瞬間、強く、強く吹いた風。


差し込んだ光の眩しさに、一瞬だけ目を細めてから開けば─── 今日も私の目には、寒空に揺れる黒髪が飛び込んできた。