「は……っ、はぁ……っ」


それから、どれくらい走り続けただろう。

家から駅まで、電車に飛び乗って学校のある最寄りの駅に着いたら、そこから学校までを必死に走った。

傘なんて、もうほとんど意味がない。

顔を叩く雨粒、濡れそぼった制服、雨の染みこんだローファー、冷えきった手のひら。

いつもなら、その全てに不快感を覚えるけれど、今は何一つだって気にしている余裕はなかった。

あと、2つ。曲がり角を曲がれば、学校の門が見えてくる。

そしたら門を抜け、学校の中に入って屋上まで一気に駆け上がろう。

屋上の扉を開けたら、そこで雨宿りをしながら空を見上げているだろう雨先輩を捕まえるんだ。


『早く、病院に行ってください』

『早く、トキさんのところに行ってください』


そう言って、雨先輩の背中を押すんだ。

雨の流れる地面を蹴って、私は学校に向かって必死に走った。

顔に張り付いた髪を避けることや、泥が靴下に跳ねることを避ける(さける)ことも忘れて、ただ必死に走り続けた。

大丈夫。今ならきっと、まだ間に合う。

きっと、今なら間に合うから。だから雨先輩、どうか少しでも早く、トキさんのところへ───