「でもさぁ、アメ先輩には、近付かないほうがいいよー」
「え?」
「なんでも、東京の学校でヤバイ事件起こして退学になったって。それで、家族とはいられなくなっちゃって、おばあちゃんに引き取られたとかなんとか……」
「まぁ、部活の先輩が言ってたことだから、詳しいことはわからないんだけどね」なんて、あっけらかんとユリは言った。
制服のスカートは未だに湿っていて、不快感だけを私の心に残している。
「─── っ、」
思わずユリから目を逸らして視線を下に落とせば、開かれた窓から冷たい風が迷い込んだ。
やっぱり、雨宮先輩……雨先輩には、悪い噂が纏わりついている。
もちろんそれが事実かはわからないけれど、火のないところに煙は立たないというし……
何より、昨日初めて話した雨先輩は、無関係の私が見ても、どこか変わっていた。
「ミウ?アメ先輩が、どうしたの?」
「う、ううん……なんでもない!」
俯いてしまった私の顔を覗き込んだユリを前に、慌てて首を横に振る。
教室の窓から見える空は、今日も澄み渡るような青だった。