ゆっくりと。古い木と木の擦れる音が静寂の中に滲んでいく。

目の前の引き出しが雨先輩の手により引かれ、その音が止んだ頃、私たちの目にはあるものが飛び込んできた。

それは、白が年月のせいで黄色に変わった封筒に包まれた、一通の手紙だ。


「これ……」

「雨先輩……」


その手紙を前に、震える声で隣の彼へと声を掛ければ、再びゴクリと雨先輩が息を呑む。

次の瞬間、引き寄せられるように手を伸ばした雨先輩は、引き出しの中から、その古い手紙を取り出した。

時間が止まったような空間で、息をすることさえ苦しく感じる。

これは一体、なんの手紙なのだろう。

逸る気持ちを精一杯押し込めながら、雨先輩が手の中の手紙を確かめるように裏返した瞬間、今度はある文字が私たちの目に飛び込んだ。


「 " 雨宿りの、星たちへ " ……?」


小物箪笥の中に入っていた手紙。

その手紙には、綺麗な字でハッキリとそう書かれていたのだ。

けれどそれは、トキさんの病室で見た、トキさんの字とはまるで違う。

どこか少し粗雑で、男らしさの滲む筆跡だ。