……トキさんは、私たちに何を伝えようとしてたんだろう。
ふわり、と。滑り込んできた風が、小物箪笥の前で佇んだままの私たちの頬を優しく撫でた。
目の前の引き出しを開けるのが、とても怖い。
トキさんのことを信じていないわけではないけれど、もしかしたら、なんのヒントにもならないものが入っているだけかもしれない。
逆を言えば、大きなヒントが入っているかもしれないし、全ては私達の勘違いで、何も入っていない可能性だってある。
─── どれくらい、沈黙を貫いていただろう。
不意に拳を強く握った雨先輩が、その小物箪笥へと手を伸ばすと壊れ物を扱うように、とても大事に両手で持ち上げ畳の上へと静かに下ろした。
「……開けるよ?」
「はい……」
雨先輩に促されるように、並んで畳の上へと腰を下ろしてから息を呑む。
そうしてゆっくりと、言葉の通り、雨先輩は小物箪笥の引き出しに手を添えた。