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「─── ここだよ」
病院を出て最寄りの駅から電車に乗り、数駅先の駅で降りた雨先輩のあとを歩いて着いて行くこと約10分。
昔ながらの閑静な住宅街に入り、しばらくしたところで雨先輩は唐突に足を止めた。
目の前には、純和風の趣のある佇まいが印象的な、大きな平屋。
今目の前にあるこの家が、雨先輩とトキさんの住む家らしい。
そうして私は雨先輩に促されるまま、綺麗に手入れをされた松の木の下を潜り家の中へと足を踏み入れた。
「お邪魔します」と下げた頭を上げれば昔ながらの檜の香りが鼻をかすめて、なんだか懐かしい気持ちになる。
「ごめん、着いて早々だけど、ばあちゃんの部屋に向かっていい? ……確認してからじゃないと、俺も落ち着かないから」
ここに来るまで、どこかに立ち寄ることもなく、真っ直ぐに歩いてきた私たち。
本当なら一息ついてからトキさんの示した小物入れの中を確認したいところだけれど、ほんの僅かな時間さえも今の私たちには惜しかった。