「だから安心して、ミウは自分の夢を追い掛けなさい。お母さん、いつだってミウのこと応援してるから」


サラサラと、外では相変わらず黄金色に輝く葉が揺れている。

私の過去も現在も、そしてこの先の未来も、決して私一人の力で成り立つものではなかった。

自分一人で成り立つ世界。そんなもの、この世界には何ひとつだって、存在しない。

お母さんや、今日まで出逢った全ての人たち。たくさんの人たちに支えられながら、今の私がいるということ。

誰かのために、生きる未来。

自分以外の誰かと一緒に、生きる未来。

未来の私もきっと、たくさんの人に支えられながら生きていく。

たくさんの人に出逢い、支え合いながら自分の未来を歩んでいくんだ。

未来は、自分一人で成り立つものじゃない。

そんな、当たり前のことにも気付かずに、私は今日まで生きてきた。

だけど今、私も大好きなお母さんのように……いつか、誰かの未来を支えるような、誰かの未来の幸せを願えるような、そんな人になりたいと、心からそう思う。


「……お母さん、ありがとう」

「何よぉ、急に畏まって。明日は雨でも降るのかしら?」

「ほ、本当に、ありがとうって思ったの……! っていうか、早くご飯食べよ! お腹空いたぁ。早くしないと、お母さんのお昼休憩も終わっちゃう!」


慣れないお礼に必死に照れ隠しをしながらスプーンを手に持てば、そんな私を見てお母さんがクスリと笑った。


「あー、そうだったわ。お昼休憩、もう、あとちょっとしかない! ソウくんも、オムライス冷めちゃったわよねぇ、ごめんね? それじゃあ、改めて、みんなで─── 」


けれど、" いただきます " と、手を合わせた瞬間。

突然、お母さんのナース服の胸ポケットに入れられたPHSが鳴って、私たちは一斉に動きを止めた。

慣れた手つきでPHSを手にとったお母さんが、素早くそれを耳に当て、目を見開く。

そのまま一瞬、雨先輩へと視線を滑らせると、途端に難しい顔をしてから電話先の相手に「急いで戻ります」とだけ告げて、通話を切った。