「……私が困ってた時にね。声を掛けてくれて、力になってくれたの」


そんな雨先輩に気づかぬふりをして、私は相変わらず前を向いたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「今も、私のために色々してくれてる。私のこと、一人で悩ませないように、傍にいてくれるの」

「美雨……」

「雨先輩は、すごく優しい人。優しくて、すごく頼りになる人だよ」


言いながら、お母さんを見て微笑めば、お母さんもまたそんな私を見て「そう……」と、嬉しそうに微笑み返してくれた。

それと同時に、幼い日の淡い記憶が蘇る。

そういえば、昔も……私はここで、お母さんにそんな話をした。

あの時は、そう。おじいちゃんが入院して、お見舞いのために幼い私の手を引いて病院に連れてきてくれた、おばあちゃんと。

この病院で働くお母さんを前に、話をした。

今のように私の正面にはナース服を着たお母さんが座っていて、隣には、おばあちゃん。

私は今のようにオムライスを前に、看護師として働くお母さんを見ながら言ったんだ。



─── 私、将来はお母さんと同じ、看護師さんになる!