何、なんで、そこで顔を赤くするの。

ちょっとくらい、否定してくれたっていいのに!

心の中でそう思いつつも、雨先輩が何も言わずに固まっているから、私まで顔が熱を持つのを止められない。


「別にね、お母さんに隠さなくていいのよ? お母さん、全然、反対とかしないもの」

「だ、だから……!」


けれど、彼氏じゃないんだってば!とは、この状況で叫ぶことができなかった。

だって、もしそう反論したとして、今のこの状況をなんと説明したらいいのか、わからない。

彼氏じゃないなら、お母さんの言うとおり、どうして休日の今日、わざわざお見舞いに来たのか。

最近仲良くなったばかりの友達なのに、その友達の家族のお見舞いに来るなんて、中々ない話だし……

逆を言えば、付き合ってるから今日は雨先輩のおばあちゃんのお見舞いに来たということにした方が、今はスムーズにこの状況を切り抜けられるに違いないのだ。

だけど、そうは言っても……この、針の筵のような状況に、心臓がうるさいくらいに高鳴って落ち着かない。


「それにね、お母さん、トキさんからよくソウくんの話を聞いていたから、ミウの彼氏がソウくんだったら嬉しいなぁって」

「え……」

「トキさん、私に " 孫のソウは、入院中の私の為に毎日学校帰りにお見舞いにも来てくれるような優しい良い子で、目に入れても痛くない自慢の孫なんだ " ……って、よく話してるのよ」