「や、約束してほしいことって……?」
「今から俺が見たきみの未来が、例えどんな未来でも、最後まで精一杯生きること」
「え……」
「頑張れなんて言わない。ただ、最後の最後を迎えるその日まで、生きることを諦めないでほしい」
「─── 、」
そこまで言うと、雨先輩は真っ直ぐにタクちゃんの瞳を見つめた。
深く、深く。意識が、蒼い海の底に沈んだ瞬間。
そのまま世界が何もない、尊い蒼に染まったと思ったら、突然弾けるように意識が浮上して、私は慌ててタクちゃんから雨先輩へと視線を戻した。
「雨、先輩……?」
「……っ、」
けれど、視線を戻した先。そこにいる雨先輩の綺麗な瞳から一筋の涙が零れ落ち、リノリウムの床に音もなく吸い込まれた。
今、雨先輩はタクちゃんの未来を見たんだろう。
タクちゃんの、これから先の未来を、雨先輩は……
「に、兄ちゃん? 俺……」
「……大丈夫」
「え?」
「もう、すぐそこまで来てるよ」
「……え、」
「─── きみの、未来」
そう、雨先輩が言葉にした瞬間。
突然、目の前のエレベーターの扉が開いて、中から一人の女の人が飛び出してきた。