「だけど、死ぬ前にもう一度だけ、信じてみたくなった」
「…………っ、」
「もう一度だけ、手を伸ばしてみたくなったんだ。俺と同じ、" 未来を失った " 女の子に」
気が付けば、涙の雫が頬を伝って零れ落ちていた。
あの日、雨先輩が屋上にいた理由。
あれから毎日、雨先輩が屋上で空を眺めていた理由。
それはきっと、いつまた裏切られてもいい準備をしていたんだろう。
自分の未来を見ることを、諦める準備をしていたんだ。
今度こそ、一人になったら。
次に一人になったら、雨先輩は、あの場所で───
「……きみ、」
「え……」
「きみの望み通り、今からきみの未来を見てあげる。ただし、その代わりに、一つ約束してほしい」
と、不意に。私から隣に視線を移した雨先輩は、今の今まで黙りこくっていたタクちゃんへと言葉を投げた。
突然のことに、大袈裟に肩を揺らして固まったタクちゃん。
そのまま、ゴクリと喉を鳴らすと、瞳を揺らして雨先輩を見つめた。