「だからさ、一緒に、期待しよう」

「……っ、」

「もしかしたら、もう少し長く生きられるかもしれない。もう少しだけ、未来を見ていられるかもしれないって、もう一度─── 」

「……俺も、何度も期待して、何度も裏切られてきたよ」

「……え、」

「もう、今度こそ期待するのは止めようって思ったのに……今、ここにいる」



突然の声に、弾かれたように顔を上げればそこには雨先輩が立っていた。

ふわふわと、僅かな隙間風に揺れる柔らかな髪。

いつから、私たちの話を聞いていたのか。

目が合うと雨先輩は一瞬だけ切なげに微笑んで、再び、ぽつり、ぽつりと話を始めた。



「俺の母は、俺が小学校に上がる頃に亡くなって……それを機に、父は俺の特別な力を使って金儲けをするようになった」

「……っ、」

「良く当たる占いだって嘘をついて。顔を見るだけで未来を言い当てることのできる " 顔相占い " だって、来る人たちを騙してた」



それは、ユリの未来を見てもらった時に、感じた疑問。

私に話を合わせてくれた雨先輩が、あまりにも嘘をつくのが巧すぎると思ったんだけど、それはこういう理由だったんだ……



「そして、少し前に、膨大なお金と権力を手に入れようとして……ついに、命を落とした」

「え……」

「なんの予告もなく、心臓発作で死んだんだ。それが、家の言い伝えである悪行を行ったことの戒めなのかは俺にもわからない」

「…………、」

「俺は、それまで父がどこからか連れてきた人たちの未来を、何度も何度も " 見て " きた。もちろん、明るい未来だけじゃない。真っ暗で、薄汚くて……目を背けたくなるような、そんな未来がたくさんあった」



はじめて聞かされる、雨先輩の過去。

小さな田舎街に拡がった、くだらない噂話じゃない。雨先輩自身から聞かされる、雨先輩の真実だ。