言いながら、再びタクちゃんに視線を戻してあっけらかんと笑えば、そんな私を見てタクちゃんは驚いた表情のまま固まってしまった。

足元に差す光。その先を辿れば長方形の窓があって、外には相変わらず鬱陶しいくらいに眩しい太陽が輝いている。



「自分が死ぬかもしれないって言われた時は驚いて……すごく怖くかったし、ショックだった。だって、自分が死ぬなんてことを今まで、考えたこともなかったから」



まるで、独り言を零すように言葉を紡いでいけば、タクちゃんは息を殺したように押し黙ってしまった。

生きていれば、いつかは必ず誰にでも平等に訪れる " 死 "。

だけどそれは " いつか " の話で、だからこそ人は、死を意識せずに毎日を平凡に過ごしていられる。

それでも、一度でも " 死 " を身近に意識してしまえば、そこからの毎日は常に死と隣り合わせになった。

頭から、自分の最期が離れなくなる。

気が付けば " 死 " が生活の中心になっていて、それに振り回されてばかりの自分がいた。



「死ぬって言われてから、もしかしたら、これは全部嘘かも……とか、全部夢かもとか思って、何度も何度も期待した」

「…………」

「でもね、期待するたびに現実を見せられて、ああ、やっぱりダメなんだ……って、その度に絶望した。それなのに、気が付けばまた、" もしかしたら " って、期待してる自分がいるの。今だってほんの少し、全部夢かもとかも思ってる自分がいて、バカだなぁって思って、その繰り返し」



嘘であってほしいって、悪い夢であってほしいって。一人になって、夜が訪れるたび、今日まで何度思ったことだろう。

だけど目が覚めるたびに、思い知らされるんだ。これは全部、夢じゃなくて現実なんだって。



「期待したら、期待した分だけ辛くなるのにね」



偉そうに、『未来を変えたい』なんて言ったけど。本当は、そうやって言葉にしていないと不安で不安で、たまらないだけ。

ジッとしてればしてるほど、胸には不安ばかりが積もって、どうにかなってしまいそうになる。



「期待すればするほど、どんどん、" 生きている今 " が辛くなった」



だからといって、辛い " 今 " から逃げることもできない。