語尾を窄め(すぼめ)、弱々しくそう言うと、タクちゃんは足元へと視線を落として俯いた。

ぎゅ、と握られた拳。

小さな身体は震えていて、途端に胸の奥が不穏の雲に覆われる。



「……その内、俺の身体は今よりもっと悪くなって、寝たきりになる。もう二度と、病院から出られなくなる。話すことさえできなくなって、そのまま死んじゃうかもしれない」



それは、はじめて知る、タクちゃんの身体のこと。思いもよらない─── とは言えない、タクちゃんの現実。



「何言ってるの。ドナーさえ見つかれば、タクちゃんは元気な身体に戻れるからってお医者様が言ってたでしょう?」

「それだって、必ずって保証はどこにもないよ」

「それは、生きている人になら誰にでも言えることよ。タクちゃんだけじゃない。今健康でいる人だって、これから先の保証なんて、どこにも─── 」

「でも!! 少なくとも、俺や、トキさんよりマシだろ!?」

「……タクちゃん、」

「それに、俺、もうこれ以上待ちたくないよ!!」



声が、言葉が、タクちゃんの痛みが、心の奥深くまで突き刺さる。



「待って、待って待って、" もしかしたら " って期待ばっかりして、いつまで待ち続けたらいい!? いつになったら、期待しなくてよくなるの!?」

「それは……」

「こんなに辛いなら、もう二度と期待もしたくないし、希望も持ちたくない! だから俺は、未来を見てほしいって言ってるんだ! 早く、諦めたいから!! それなのに……それなのに、どうして誰も、俺の気持ちをわかってくれないんだよ!!」

「タクちゃん……!!」



強く拳を握りしめ、悲痛な叫びを残してタクちゃんは、そのまま部屋を飛び出していった。

そんなタクちゃんの背中を、トキさんは青白い顔で見つめていて、隣に立つ雨先輩もただ悲しげにタクちゃんが出て行った扉を見つめていた。