「なぁ、アンタ。アンタは、この兄ちゃんに未来を見てもらったんだろ!?」



そうして案の定、私が部屋に入ってきた瞬間、タクちゃんが再び声を荒らげる。

昨日も全く同じことを聞かれて必死に誤魔化したけれど、どうにも収集がつかなくなったから私と雨先輩は逃げるように病室を出たんだ。

お陰で、肝心の『未来を変えるためのヒント』については、何も聞けなかった。

だからこそ今日もこうして、トキさんのところに来たのだけれど、このままだと昨日と同じことになりそうで頭が痛くなる。



「この兄ちゃんは、未来が見えるんだろ!?」

「い、いや……だからそれはね、昨日も雨先輩が言った通り、タクちゃんの勘違いで……」

「勘違いなんかじゃない。俺は、この耳で聞いたんだ! 兄ちゃんが人の未来を見ることができるって、確かに……」



真っ直ぐに私を見るタクちゃんの目は酷く真剣で、苛立ちの色が滲んでいた。

そんなタクちゃんを前に、私も雨先輩もどうしたら良いのかわからなくて困惑するばかりだ。

タクちゃんが言う『未来を見てほしい』理由が『自分がいつ死ぬのか教えてほしい』であることも戸惑う理由の一つ。

『いつ死ぬのか教えてほしい』なんて、私だったら怖くて絶対にそんなこと聞けない。

そもそも、どうしてそんなことを聞きたいのかもわからないし、相手が自分よりも小さな男の子だということに戸惑ってしまう。