「でも……昨日は、大切な話もあるって言ってたでしょう? それ、聞く約束だったのに聞けなかったから……」
言葉の通り、お母さんが一番気にしているのはそのことだろう。私が昨日の朝、『大切な話がある』なんて言ったせい。
滅多にそんなことを言わない私が、思わせぶりなことを言ってしまったから、お母さんは気にしているんだ。
もちろん、夕飯の約束を守れなかったことも気にしてくれているとは思うけど、比ではないだろう。
「大切な話っていっても、そんな大した話じゃないから」
「でも……」
「……進路の、話なの」
「進路の話?」
「……うん。進路の話で、お母さんに相談したいことがあって、それで」
そこまで言って、視線を足元へと落とせば熱が奪われていくように足先が冷たくなった。
ドクドクと大袈裟に鳴る心臓がうるさい。
お母さんが、どんな反応をするのかわからなくて、柄にもなく緊張している自分がいて緩く拳を握った。
「……バカね、ミウは」
「……っ!」
と。不意に、頭に触れたぬくもり。
弾かれたように顔を上げれば、私を見て優しく微笑むお母さんと目が合って思わず目を見開いた。