「だからね、あなたには小さい頃から言っていたでしょう。余程のことがない限り、他人に自分の特別な力のことを話してはいけないと」
雨先輩を諭すように言ったトキさんの言葉には、雨先輩を想う気持ちが痛いほど溢れていた。
「あなたに、何かあってからでは遅いの。あなたの、その特別な力が世間に知れたら、あなた自身にも多くの危険が及ぶかもしれない」
そうか。そうなんだ。
今までは、そんなこと思いもしなかったけれど、雨先輩のこの特別な力のことが世間に知れたら、それはそれは大変なことになるだろう。
雨先輩の力を使って、何か、悪いことをしようと思う人が現れるかもしれない。
トキさんの言う通り。雨先輩自身にも、何か、危ないことが起きたりするのかもしれない。
「……わかってるよ。だから俺自身は今日まで、なるべく他人と関わらないように生きてきた」
「それなら、」
「だけど、そのせいで……未来が見える、この力のせいで、今日まで俺は、ずっと孤独だったんだ。誰にも自分の本音を言えずに、ずっとずっと孤独だった」
「…………っ!!」
と。雨先輩が、そう言い切ったと同時に、不意に右手が温かい何かに包まれた。
慌てて視線を下に落とせば、その先には雨先輩の左手と繋がった、私の右手が目に入る。
それを確認した瞬間、身体が沸騰したように熱くなり、顔が熱を持っていくのがわかった。
困惑しながら雨先輩を見上げれば、私を見て優しく微笑む彼と目が合って、心臓がドクドクと大袈裟に高鳴り出す。