「何、言って……」
困惑のまま言葉を零せば、再び彼の視線に射抜かれて、今度こそ心臓が早鐘を打つように高鳴った。
何かが、おかしい。
先程から、雨宮先輩に渡される言葉の、何かが。
「別に、信じなくてもいい。だけど、間違いなく雨は降る」
「……っ、」
その言葉を合図に、私は冷たいコンクリートを蹴って走り出した。
これ以上、雨宮先輩と同じ空間にいたらいけない気がして。
そのまま来たばかりの廊下を走って職員室を通り過ぎ、自分の教室までの道程を止まることなく駆け抜ける。
「ミウ、おかえり。先生からのお説教、終わったの?」
教室に着くと、息を切らした私を見て友達の一人が心配そうに声を掛けてきた。
それに答えるより先に、私は窓際まで歩を進めて屋上を見上げ、彼の姿を探したけれど……
その時にはもう屋上に、雨宮先輩の姿は見当たらなかった。