「ソウちゃんが、お友達を連れてきてくれるなんて嬉しいわ」
そう言うと、おばあちゃんは可愛らしく笑って雨先輩を見た。
とても、とても温かい空気を纏った人だ。存在だけで、周りを優しさで包み込むような人。
雨先輩がついてきてほしいと言ったのも、もしかして自分のおばあちゃん……トキさんに、私を会わせるためだったんだろうか?
「ばあちゃん。この子は、美雨っていうんだ。ばあちゃんの言う通り…………俺の、一応、友達みたいな」
「は……はじめまして!榊 美雨といいます!」
「ミウちゃん? 素敵な名前ね」
言いながら一歩前に出て雨先輩の隣に並び、頭を下げれば、くすくすと優しい笑みが落とされた。
やっぱり、雨先輩はトキさんに会わせるために、私をここに連れてきたんだ。
そうじゃなきゃ、おばあちゃんに私のことを紹介する意味もない。
というか……今更だけど、私と雨先輩って友達なの?
まぁ、友達以外の表現をしろと言われたら、私もなんと言えばいいのか、わからないけど。
「それで? 今日は、どうして二人で来てくれたのかしら」
その言葉に、再びトキさんへと目を向ければ、不意に視線と視線が重なった。
吸い込まれるような黒い瞳。その瞳に射抜かれた瞬間、言葉が喉の奥に押し込められて、目を逸らすことも叶わなくなる。
「私に、何か聞きたいことでもあるのかしら」
紡がれた言葉に、雨先輩のおばあちゃん───
トキさんには、何もかもを見透かされているのかもしれないと、緊張で胸が大きく高鳴った。