「美雨? 降りないの?」
「……えっ、あ……すみません!!」
ぼんやりと、そんなことを考えていれば、いつの間にか目的の階に辿り着いていたエレベーター。
一足先に降りていた雨先輩に声を掛けられて、私は慌てて箱の中から飛び出した。
「うわ……っ!?」
「わ……っ!!」
─── と。その拍子に、エレベーターの扉の向こうに立っていた人とぶつかって、身体が大きくよろめいた。
バランスを崩した身体はそのまま後ろへ倒れて尻餅をつく。
だけどそれは相手も同じだったようで、「イタタ……」と声を零した私を戒めるように、酷く不満気な声が投げられた。
「痛いなぁ……急に飛び出してくるなよ」
「す、すみません!!」
謝った拍子に指先にぶつかったのは、真っ黒な携帯電話だ。
咄嗟にそれを拾い上げ、病衣を着ているその人と交互に見れば、引き換えに大きな溜め息が落とされた。
「……アンタ、いくつだよ。病院内のエレベーターから急に飛び出してくるなんて、今時の小学生でもそんな非常識なこと、やらないよ?」
幼さを残した声。驚いてから目を見開けば、私よりも頭一つ分、小さな男の子と目が合った。