「……美雨?」
「あ、ありがとうございます」
「え?」
「ここに、いてくれて。私に、声を掛けてくれて」
突然の私の行動に、雨先輩が驚いたように私を見る。
『ありがとうございます』なんて、可笑しいかもしれない。
だって、あの時、雨先輩に声を掛けられなければ、私はこんな風に悩むこともなかった。
それでも、雨先輩に声を掛けられてから見えた世界。気付いたことが、たくさんあるというのも事実だから。
当たり前が当たり前じゃなかったこと。死ぬことに対する恐怖。過去に置き忘れた思い出。自分の弱さ、やっぱり死にたくないと思ったこと。
たった数日の間に、見えた世界がたくさんあった。
どれも大切で、とても綺麗な私の宝物なのだと気付かされたんだ。