「急に何を言い出して……っていうか、どういう心境の変化?」
けれど、雨先輩は相変わらず落ち着いていて、興奮気味の私とはまるで正反対の場所にいる。
後ろに見える空は相変わらず青く澄み渡っていて、それが更に私の気分を高揚させた。
「私、昨日の夜、考えたんです。雨先輩は未来は変えられないって言うけど、それは雨先輩に変えられないってことで、雨先輩じゃない私だったら未来を変えられるんじゃないか……って」
言いながらスカートのポケットから取り出したのは、折りたたまれた一枚の紙。
それを拡げると、私は書き連ねた文章を一つ一つ読み上げた。
「つまり、ですね」
今までのことを整理してみると、こうだ。
まず、今目の前にいる雨先輩は " 未来を見る " 不思議な力を持っている。
雨先輩が見た未来は、必ず現実になるらしい。それで言うと、私はどうやっても3日後に死んでしまう。
雨先輩は、自分が見た未来を自分の手で変えることはできない。なぜなら、変えてしまうと未来を見る力を失うどころか、雨先輩自身がこの世界から消えてしまうからだ。
未来のことを強く考えている相手の目を見てしまった時だけは、雨先輩の意志とは関係なく、相手の未来が見えてしまうことがある。
そして、雨先輩に見えるのは他人の未来だけで、自分の未来を見ることはできない。
「これで言えば、もしかしたら雨先輩が見た未来を、雨先輩じゃなくて私が変えることは可能かもしれないってことですよね? これまで、そういう実例がなかっただけで」
「…………こんなこと、よく、まとめたね」
胸を張って言えば、雨先輩はどこか呆れたように笑った。