「……は、っ」
高く、もっと高く。風を切るように。
空が近くなって、視界の地面が滑るように動く。
自分が飛ばした靴の場所までカズくんが辿り着き、それに足を通して息を吐く。
そうしてゆっくりと、カズくんが私の方へ振り向いたところで───
私は、片足を強く、振り上げた。
「うわっ!」
綺麗な弧を描いて飛んでいった私の靴。
それは、カズくんの頭上を超えた先で、乾いた音を立てて着地した。
「ミウ、何やってんだよ、急に!」
「……っ、飛んだ」
驚いているカズくんを置き去りに、ぽつりと零せば、胸の奥から次々と熱い何かが込み上げてくる。
小さい頃、カズくんに負けたくなくて、いつか絶対に勝ちたくて。この場所で、何度も何度も練習した。
いつか絶対、カズくんよりもっと遠くに飛ばしてやるんだ、って。
いつか必ず、カズくんに勝ってみせるんだって、そう思って。
「……っ、カズくん、私の勝ちだよ!!」
「ミウ、お前、実はコッソリ練習してたろ!」
飛んでいったばかりの私の靴を片手に持ったカズくんが、やっぱり笑いながら言う。
それに「過去で、いっぱい頑張ったからね!」と返事を返した私は、今という未来で笑っていた。