「頑張れない時は、頑張らなくていい。でも、ずっと頑張らないでいたら、自分の手には何も残らない」



いつの間にか、頬を伝った涙の雫。それを拭うことさえ忘れて、私は真っ直ぐにカズくんを見つめていた。



「それに……やっぱり、頑張った方が楽しいと思う。未来でも、頑張った分だけ楽しいことがたくさん待っててくれる気がする。だから、頑張りたいって思うんだよ。……俺は、な?」



ニッ、と。そんな音が付きそうなくらい、イタズラに笑ったカズくんの笑顔は、子供の頃とは少しも変わっていなかった。

今日も、茜色の光が、群青の中に消えていく。

その中でも最後の最後まで空を染めるその色は、どこまでも力強く真っ直ぐだ。

いつの間にかブランコを降りたカズくんが、ケンケンで遠く離れた靴を取りに向かう。



「…………っ、」



その背中を視線で追いかけながら─── 私はブランコの上に立ち上がると、先にカズくんがやったように、身体を大きく揺らした。