「だって、ミウが言うことって昔から、よく当たるし。俺が野球部入った時に、カズくんはきっと将来部長になるって言ったのも当たった」

「それは……カズくんが、カズくんだからで……カズくんなら、きっと部長が務まるだろうと思ったから……」

「その他にも、家の前を通っただけで、我が家の夕飯を言い当てたり。ばあちゃんの調子が悪い時も、顔を見ただけで気付いたり……」



茜色に染まる空に照らされた、カズくんの姿。

たった今渡された言葉の全ては、私たちの過ごしてきた時間があってこそだ。

私に、雨先輩のような未来を見る特別な力があるからじゃない。

ただ単に、私は自分の目に映ったことを、そのまま伝えていただけだ。



「ミウはさ、昔から、周りのことによく気が付くよ。自分以外の人のこと、よく見てる」

「そんなことない……私は、ただ」

「だから……ミウの言う通り、もしも本当に夢が叶うなら、俺は、今以上に頑張らないとな」

「え……」

「夢を夢で終わらせないために……。もっと、いっぱい頑張らないと」



そう言うと、カズくんは再び、茜色に染まる空を見上げた。

『いっぱい、頑張ろう』

思い返せば、あの日の空も今と同じ、茜色。

その空を背景に私の目に映るのは、昔から変わらない。いつだって、真っ直ぐな瞳と、強い意志。

その眩しさに、つい呆然と見惚れてから私は小さく息を吐いた。