「……ねぇ、カズくん。カズくんの夢は、絶対に叶うから大丈夫だよ」

「え?」

「カズくんは、将来、絶対に学校の先生になれる。だから、安心して?」



突然の私の言葉に、私を見たカズくんが目を見開いて固った。

そんなカズくんに向けて小さく微笑むと、再び足元へと視線を落とした。

頭の中で繰り返されるのは、昼休みに聞いた雨先輩の春風のような声。


『─── 将来、教卓の前に立って授業をしている姿。それに、子供たちと野球をしながら笑い合っている姿が見えた』


カズくんの未来を、私は知っている。

私は、雨先輩から聞いて、知っているの。

今、カズくんは受験勉強に追われる日々を過ごしているだろう。

私が気付いていないだけで、不安とプレッシャーに押し潰されるような毎日を、過ごしているのかもしれない。

必ず叶う夢と輝かしい未来が待っているのに、カズくんは限界まで自分の身を削りながら頑張っているんだ。

きっと、いっぱい頑張ってる。

だから私は……その重荷が、少しでも無くなればいいと思った。

少しでも、カズくんの心の負担を減らしてあげたかった。

カズくんの夢は、絶対に叶うから大丈夫だよ、と。

そう、カズくんに伝えることで、少しでもカズくんの心が軽くなればいいと思ったんだ。