私たちが動くたび、ブランコの鎖がギシギシと唸る。
昔は、ブランコが何よりも楽しい遊びのような気がして夢中になった。
けれど歳を重ねるに連れて、ブランコどころか公園にすら足を運ぶこともなくなって。いつの間にか、この場所自体が過去に変わってしまった。
だけど過去は未だに色褪せずに、私たちのすぐそばにあったんだ。
そんなことにも気付かずに、私は当たり前ばかりを見落として、毎日を過ごしてた。
「でも、ミウ、よく覚えてたな、そんなこと」
茜色に染まる空を眺めながら、カズくんが言った。
……覚えてるよ。覚えてるに決まってるじゃん、だって。
あの時、水溜まりに靴を落として大泣きした私を、家まで連れて帰ってくれたのは誰だと思ってるの。
ビチョビチョに濡れた靴を持って、泣いている私のことを背負って家まで連れて帰ってくれたのは、他でもない、カズくんだ。
『ミウ、大丈夫だよ』
あの日のカズくんが、私に語りかけてくる。
悔しくて、悲しくて泣いている私に、あの日のカズくんが言った言葉は、今も心の中にあった。