「うわー、懐かしい!」
公園の入り口に自転車を停めて中にはいると、真っ先に目に飛び込んできたのはシーソーだった。
小さい頃、私はシーソーが大好きで、しつこいくらいにシーソーばかりをしている時期があった。
カズくん以外の近所の子たちが次々と飽きていく中で、カズくんだけはそんな私に最後まで付き合ってくれたんだ。
滑り台は、お気に入りのスカートを履いたまま滑って、汚してしまったことがあった。
ショックで泣き出した私の手を引いて、カズくんは水道で汚れたスカートの裾を洗ってくれた。
結局、そのせいで汚れが更に広がって、カズくんは私のお母さんに助けを求めに行く羽目になったんだけど。
鉄棒は、カズくんが得意だった。
逆上がりも、誰よりも一番最初に出来たのはカズくんで、あの頃はたったそれだけのことでカズくんは皆のヒーローになった。
「昔さぁ、よくブランコで靴飛ばし、やったよな。誰が一番遠くまで飛ばせるかって、何度も何度も」
茜色に染まり始めた空を眺めながら、カズくんが言う。
私たちは、あの頃と同じように二人並んでブランコに座り、笑い合っていた。
「ミウは、本当に負けず嫌いでさ。俺に勝てるまでやるんだって聞かなくて、結局、最後の最後に靴を飛ばしたら、その靴が─── 」
「水溜まりに落ちて、大泣きする羽目になったって言いたいんでしょ?」
思わず唇を尖らせて先回りをすれば、カズくんは「あの時は、ホント面白かったな」と、楽しそうに笑った。