あの写真は結局あたしが持ったままでいる。でもなんだか見たくなくて、あの夜、帰ってきてすぐに部屋の机の引き出しにしまいこんだまま、一度だって見ていない。それでも返す気にはどうしてもなれない。
盗んだ(というと語弊があるけど)ことがバレるのがこわいんじゃない。
おじさんに、おじさんの大切なひととの思い出を返すのが、無性に嫌なんだ。どうしてそう思うのかがわからないのがよけいに気持ち悪い。
おじさんは写真がなくなったことに気付いているだろうか。
もしかしたらいまごろ必死に探しているかもしれない。なくなったと思って、すごく悲しんでいるかもしれない。
人としてとてもサイテーなことをしているのはわかってる。
でも、返したくない。
どうしたって返したくない。
あたしはサイテーなやつだな。いったいなにしてるんだろう。