きょうもアトリエには独特のにおいが漂っていた。やっぱりこのにおい、好きだなあ。
すぐに見つけた。作業台の上にある、あきらかにアヤシイ紙袋。おじさんには似合わない雑貨屋さんの名前が書いてあるんだもん、よく目立ってる。
その一点に釘付けになっているあたしに気付いて、おじさんは笑う。
「いいよ、あれ、やるよ」
紙袋のなかには少し大きめのやわらかい袋が入っていた。口の部分をきゅっと絞れるやつ。あけると、まるくてカタイ、平たいものが出てきた。
「あ……これ」
お皿だった。こないだショッピングモールに行ったときに見たうちのひとつだ。
透明なガラスに、大きなひまわりがドンと描いてあるやつ。きれいだし、カワイイし、インパクトがあるから、実はいちばん忘れられずにいたんだ。次に見に行ったときは迷わずこれを買おうって、ひそかに決めていたのだった。
「ねえ、あたしがこれスゴイ気になってたこと、わかってた?」
「べつに、たまたまだろ」
ウソだ。ぜんぜん興味なさそうにしてたくせに、こんなのってちょっとずるいよ、おじさんのくせに、ずるいよ。
「ありがとう、和志さん」
やっぱりこの男はあたしのことをいろいろ知ってるよ。よくわかってるし、見透かされてる。どうにも暴かれてる。