部屋に戻ると、サユはすっかり起きていて、おじさんも帰ってきていた。そんなに長いこと話していた感じはしないのに、けっこうな時間がたっていたみたいだった。
おかーさんとサユはそれからすぐに帰っていった。
駅まで見送った帰り際、ふたりは誕生日プレゼントをくれた。手渡されたのは薄いピンクの紙袋。小さいわけでも、大きいわけでもない、両手で抱えらるくらいのちょうどいい大きさのやつ。
そのなかには、きれいにラッピングされたふたつのプレゼントが居座っていた。
なんだろう。なかなかずしっとくる重さ。
「――あ、かわいい」
リビングに戻るなりプレゼントはすぐにあけた。ペアのグラスと、オレンジとピンクのあいだのような色のマニキュア。サーモンピンクっていうの?
たぶん、グラスがおかーさんからで、マニキュアがサユからだね。名前は書いてないたけど絶対そう。わかるよ。
マニキュア、いい色だな。サユっぽい色。派手なのにかわいくって、これからの季節にピッタリだって思った。
グラスはたぶん……おじさんとペアってことなんだと思う。
「よかったな」
ふいに低い声が降ってきた。半透明のピンクとキミドリのうち、キミドリのほうのグラスを手渡すと、おじさんはなんともいえない変な顔をした。
「ゆりさんからだな」
おじさんにもわかるんだ。さすが、ハタチのころから知ってるだけのことはあるね。
「いっしょに使おうよ」
「そうだな。せっかくおまえの誕生日にもらったもんだし」
「かわいいね、これ」
「そりゃゆりさんが選んでるんだからな」
おかーさんはインテリアのデザイナーをしているからか、生活雑貨のセンスがいちいち抜群にいい。
このグラスもそう。あたしにも、おじさんにも似合うようなシンプルなデザインで、うるさすぎないし、でも地味すぎないし……。普段の食卓にさりげなくこのグラスが並んでいたらすごくお洒落なんだろうなって思うよ。あしたからの夕食がすごく楽しみだ。