会ったことがあるならそう言ってほしかったよ。おじさんも人が悪い。

それともおじさんはもう忘れてちゃってるのかもしれない。そんな昔のこと、それもハナッタレの子どものことなんか、カケラも記憶になくたってしょうがない。

それはそれで悲しいような気がする……から、この話はおじさんにはしないでいっか。


「佐山くんに興味ある?」


同級生に片想いをからかわれるみたいに言われた。

突然いっきに顔が熱くなって、そしたらおかーさんはもっとヤな笑みを浮かべるから、ワケわかんない。


「だって、ヘンな男なんだもん」


言い訳をするかのようにまくしたてた。


「なに考えてるかわかんないし、だからつかみきれないし、ぶっきらぼうで冷たいクセにたまに優しいし、真顔でジョウダン言ったりするし。なんか、あたしとは――ほかの人とは、ぜんぜんチガウ生き物みたいに思えるんだもん」


早口になってしまった。おかーさんはなにも口をはさまないで、それでも同級生みたいな顔のまま、黙って聞いていた。


「たしかに、佐山くんってちょっとアンダーグラウンドな場所で生きてる感じするかも」


アンダーグラウンド……。なるほど、たしかに。そういうお洒落な言葉をさらりと使える女になりたい。