いつもおじさんと向かいあって食事をしている正方形のテーブルは、ふたりではちょっと大きいくらいなんだけど、4人で使うとなるとけっこう狭い。しかもきょうは品数も多いし、おまけに真ん中には大きな鍋が居座っているもんだから、テーブルの上はかなりぎゅうぎゅうだった。
でも、こんなのもいいなって、箸で肉を泳がせながら思う。
ずっとゴハンはひとりで食べていた。コンビニ弁当とか、スーパーのお惣菜とか、おいしくない、あったかくないものばかり食べていた。
1か月前、学校に行くのをやめてからは自分でゴハンをつくるようになったけど、それでもだいたい食卓にはひとりで座っていた。やっぱりぜんぜんおいしくなかった。それはあたしの料理の腕前だけが問題じゃなくて。
ひとりで食事をするテーブルは、すごく広かったよ。まるで無限に続く宇宙のようにさえ思えた日もあった。
「いーちゃん、それわたしのお肉!」
「ウソ、あたしのだよ。見てたもん」
だからこういうのって新鮮だ。ゴハン食べながらみんなでわいわいするのって。
テーブルが狭くて食べづらいのがこんなにも心地いいものだって、あたしはずっと、知らなかった。
まあそういうの抜きにしてもおじさんの料理はびっくりするほどおいしかったんだけど。なんかやっぱりくやしい気持ち。
新しい肉をぺろんと鍋に放ったサユが、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば三宅に会ったんだってね?」
その名前が出た瞬間、なぜかはわからないけどおじさんのほうを見てしまう。でもおじさんはなんでもない顔で肉と白米を口に運ぶだ。なんとなく、妙に恥ずかしい。