「いっしょに住んでる……って、親戚かなんか?」


三宅の眉間にぐぐっと皺が寄った。おじさんのことすごくあやしんでいるみたいな顔だ。はじめておじさんに会った日のあたしもきっと、同じような顔をしてたんだろうな。


「そういうんじゃないよ」

「じゃあどういうんだよ」

「えっと……まあ、いろいろややこしいんだ」

「なんだよ、それ。ほんとに大丈夫なんだろうな?」


三宅がおじさんをにらむ。いつもアホみたいに笑ってしゃべっているから、こいつがこんな表情をするなんてことは知らなかった。けっこうびびった。

でもおじさんは面倒くさそうに息を吐いただけだった。


「親戚でいいよ。こいつには『おじさん』って呼ばれてるし、こいつの母親には姉みてえにずいぶん世話んなってるし、たぶん、世間一般でいうそれとそんな変わんねえよ」


ゆったりとした低音で静かにそう言ったおじさんは、やっぱり圧倒的に大人だ。

三宅もなにも言い返せないで、ただちょっと口ごもって、そっすか、って。同い年の男子がこんなにも子どもっぽく見える日がくるとは思ってもいなかったよ。


誰もそれ以上に話すことなんかなかったので、三宅とカノジョはそのまま帰っていった。結局カノジョなのかなんのかよくわかんないけど。帰り際にちょっと嫌な顔されたし、どうでもいいよ。

いろいろと最悪だ。特に、三宅とカノジョと3人で話していた時間の居心地の悪さといったらなかった。三宅は女の趣味が悪いな。ほんとにアホ。


小さくなるふたりの背中を見ながら、無意識に、おじさんのシャツの裾を握っていた。


「……帰るか。皿はまた今度にしよう」


ああ、そうだ。そういえば、新しいお皿を買いに来ていたんだっけか。