声は、三宅と同じ制服を着た女子生徒のものだった。
「……あれ、中澤さん」
知らない子だったけど、彼女はあたしのこと知っているふうだった。それってなんとなくこわくて、うまく笑えない。
あたしの顔をじっと見つめたまま、彼女は三宅の腕にするりと抱きつく。すごく女の子っぽい動きで、なんとなく居心地悪いような感じがした。
もしかして、付き合ってるのかな?
なんだ、あたしが学校行っていないあいだに三宅にもカノジョができていたんだな、知らなかった。しかもチョットかわいい子。何組の子だろ。どうやって知り合ったんだろ。いつから付き合ってるんだろ。
「中澤さんは、いいね」
いろんな疑問を頭のなかに浮かべて、ぼけっとふたりを眺めていると、彼女がふいに口を開いた。半笑いの口元が気持ち悪い。
「学校サボって、優雅にクレープ食べて、いいね。ウチだったらそんなの絶対お父さんとお母さんが許してくれないよ。……ああでも、そっかぁ、中澤さんとこってお父さんいないんだっけ?」
「は……?」
心臓がどくどく脈打っているのが、頭にまで響いてくるみたい。
「きっとお母さんもたいがいなんだろうね」
誰かにこんなにもあからさまな敵意を向けられたのははじめてのことだった。
頭が真っ白。胃袋に詰めこんだ生クリームが出てきそう。すごく寒くて体は震えているのに、変に汗ばんでいて、気付けば痛いほどに奥歯を噛みしめていた。
三宅が彼女を制止するようになにか言っているけど、よくわからない。
よくわからないよ。
なにを言われたのか、ぜんぜんわからない。