「楽しくないよ」
三宅は独特のハスキートーンで答えた。スポーツマンらしい、清々しいほどにはっきりした声だった。
「ぜんっぜん楽しくない。英語ワカンネーし」
「じゃあどうして学校行ってるの?」
「なんでだろうな? 考えるの得意じゃないから、そんなこと聞かれたってわかんないよ」
眉をハの字にして笑う三宅はやっぱりアホだ。
「中澤って、時々よくわかんないこと言うよな。おもしろいな」
そうかな。そんなこと言うの、たぶん三宅だけだよ。
「……なあ。ほんとさ、学校来いよ」
いきなり真剣な調子で言われたから、口に入れかけていたクレープを食べそこねてしまったじゃん。ぽかんと口をあけたまま三宅を見つめると、向こうもじっとあたしを見つめていて、どきりとした。
その視線に、なんか責められているみたいだった。
当たり前だよ。
だって三宅は毎日まじめに学校行って、授業受けて、キッツイ部活もこなしてるんだもんね。なのに、あたしは平日の夕方に私服でショッピングモールに来て、のんびりクレープ食べてる。
あたしってきっとダメな種類の人間なんだな。薄々気付いてはいる。
行きたくないから学校に行かないなんて、世間では“頭オカシイ”んだよ。異端なんだ。責められて当然だ。
この世界では、少数派が圧倒的に不利ってこと、知っている。
「――三宅くん!」
そのとき、あたしたちの真ん中に甲高い声が降ってきた。
三宅に対してなんと答えればいいのかわからないでいたから、少しほっとした。