手の熱で生クリームがふにゃりと溶けだしてきている。


「生きてるよ。死んでたらたぶん連絡いってる」

「そりゃあそうだけどさ。でも顔見て声聞いて、こうやって話して、なんかほんとの意味で安心できたっつうか」


そんなふうに笑わないでほしい。なんだかすごくワルイコトをしてる気分になるから。


「なあ中澤。学校来いよ。おまえがいないと、おれツマンナイよ。高瀬もさみしそうにしてる」


三宅はなんのために学校に行ってるんだろう?

やっぱり部活のためかな。

三宅が泳いでるところなんて体育の授業でしか見たことがないけど、こいつって水のなかでは最強なんじゃないかってくらい、別格だ。速いし、それだけじゃなくて、とてもキレイな泳ぎをするんだ。

でも、泳ぐだけなら、べつに部活じゃなくてもいいわけだし。

三宅はどっちかと言わずともアホだし、勉強なんてしたくないっていつも言っているから、勉強をするためでもないだろうし。

じゃあ、友達に会うため……とか?

ぜんぜんなんにもしっくりこないよ。なんだろ? どうして三宅は英語の小テストを毎回とても嫌がりながら、それでも学校に行くんだろ?


「ねえ、楽しい? 学校」


三宅はきょとんとした。なにを言われているのかわからないって顔。

あたしはそれ以上はなんにも言わないで黙っていた。クレープをかじると、やっぱり少しゆるくなっている生クリームがどろりと口のなかに流れこんできた。