ガキなんだろうか。あたしは。ガキ、なんだろうか。
この男になにかと子ども扱いされるたび、もやもやする。いまだってもやもやしてる。居心地悪い、やってらんないって感じ。
でも、たしかにそうだね。ガキだね。あたしは自分でも嫌になるほどガキなんだって、たったいま思い知ったよ。こんなことで泣いちゃうなんてださすぎる。
「こんな安もんのひとつやふたつ、割れたところでどうってことねえよ。それよりメシ食ったあとでよかったな」
おじさんが小さな子どもをあやすみたいに言った。
「祈にケガがなくてよかった」
そう言われたとき、大きな手が乗っかっている頭のてっぺんが、突然ものすごい熱を持った気がした。あったかいっていうより、じゅっと焼けるみたいな感じ。熱い。
「新しい皿、買えばいいよ。今度買いに行こう。おまえの好きなやつ買おう。だから泣くな」
おじさんはいつもよりいくぶん優しい口調だし、言葉も慎重に選んでくれているみたい。たぶん気を遣ってくれているんだね。
そう思ったらもっと涙が出た。情けなくて、恥ずかしくて、でもそれだけじゃないような気がして。
「ごめんなさい……」
「大丈夫だからもう謝んな。あはは、こんなことで泣くのかよ、おまえ。おもしれえなあ」
おじさんは困ったような表情だった。
でも、いま、たしかに声を出して笑った。
びっくりした。おじさんがこんなふうに笑ったの、はじめてだ。優しい顔で笑うんだって思った。遠慮がちに息を吐くんだって思った。