◇◆


「うわっ」


あたしが声を上げるのと同時に、足元でガチャンというイヤな音がして、それはそのまま粉々に砕けた。大きなお皿だった。陶器の、重たい、ちょっとよさそうなやつ。


「なにしてんだよ」


その場でかたまったまま、ただぼうぜんと立ち尽くしているあたしに、おじさんがカウンターの向こう側から声をかける。よもぎも驚いたのか、やって来た。

はっとしてしゃがみこむ。早く片付けないと……。

ああ、ついにやっちゃったよ。どうしよう? もしすっごく高いお皿だったら、ほんとにシャレになんない。


「おい、触んな」


見事に粉々になってしまったベージュに手を伸ばしかけたとき、ぴしゃりと低い声が降ってきた。


「手ぇ切ったらどうすんだ。危ねえから、安易に触んな」

「でも……」

「いいからおとなしく風呂でも入ってこい。片付けはやっておくから」


さっきからずっと、怒ったような声。

ハイわかりましたと、自分だけ優雅にお風呂に入るなんて、できるわけないじゃん。落として割っちゃったのはあたしなんだ。

だから、すでにしゃがんでビニールの袋に破片を集めているおじさんのうしろに、ただ黙ってぽつんと立っていた。おじさんは半分くらい破片を集め終えたところで怪訝そうに振り返った。そしてぎょっとした。


「……なんでこんなことで泣くんだよ。ガキか」

「ごめんなさい……」


自分でも情けないほどに力のない声だと思ったよ。でもこれが精いっぱいだった。

申し訳ないとか、やっちまったとか、びっくりしたとか、いろんな気持ちが混ざって、のどの奥がぎゅうっと苦しくなって、うまく声が出なかったんだ。


「……ああ、そういや、ガキだったな、おまえ」


のそりと立ち上がったおじさんに、頭をぽすぽす撫でられる。