おじさんは、手ぬぐいを広げてパンパンと伸ばすと、ふたつ並べて竿に干した。手ぬぐいじたいは同じ大きさ、同じ色なのに、模様が違うだけでこんなにも印象が違うんだな。おもしろいな。
おじさんのほうの、丸かったり四角かったり、白く残っているまだら模様は、輪ゴムで縛ってつける。こうして広げると万華鏡みたいだ。あたしのほうのはハートをたくさん散りばめたからこういうふうにはしなかった。
「あした完全に乾いてたら、家に持って帰ってやる」
だからもうそろそろ帰ろうかと、あたしに視線を移して、おじさんは言った。
壁にぶら下がっている、どうにも味気ない掛け時計に目をやると、すでに10時を過ぎていた。ここに来たのがたしか8時過ぎだったから、もう2時間近くたっている。
あっという間だった。
うん、あっという間だった。実にあっという間だったよ。
たぶん、すっごく、楽しかったんだ。
「また、来てもいい?」
口に出したのは無意識で、だから自分でもびっくりした。
「いつでもドーゾ」
おじさんはこっちを見ようともせず、興味なさげに答えた。
なんだ、もっと喜んでくれるかと思ったのに、つまんないの。