◇
おじさんの好物はしょうが焼きらしい。
だから今夜はしょうが焼きにすることにした。おじさんのリクエストで、しょうが焼き専用のデッカイ平べったい肉じゃなくて、豚バラ肉と書いてある細々したお肉にした。
2番目に大きいパックを買った。業務用スーパーのだからなかなかの量だ。
「しょうが焼きっつうか、豚のバラ肉が好きなのかな、俺。しゃぶしゃぶとかもだいたいバラでするし」
フライパンをスポンジでこすりながら、ひとり言みたいにおじさんは言った。
キッチンにはいい香りが立ちこめている。しょうがとにんにくと醤油の絶妙なにおい。
「なに? バラ肉って」
「腹の肉だよ」
聞いてもまったくぴんとこないのがさすが料理のできない女子だよなぁと、我ながら思う。
できたてのポテトサラダを木製のボウルに盛って、てっぺんにプチトマトをぎゅうっと押しこんだ。ポテトサラダはあたしの好物だ。あたしのつくるそれが、おいしいかどうかは、またベツとして。
「今度しゃぶしゃぶするか」
いきなり、おじさんが思いついたように言った。
「それ、自分が食べたいだけジャン」
「祈は肉は好きじゃねえの?」
「好きだけど」
「なら、いいジャン」
口調、真似されたジャン。でもおじさんはポーカーフェイスを崩さないままで、やっぱりこいつはどうにも食えない男だなと思った。
おじさんの好物はしょうが焼きらしい。
だから今夜はしょうが焼きにすることにした。おじさんのリクエストで、しょうが焼き専用のデッカイ平べったい肉じゃなくて、豚バラ肉と書いてある細々したお肉にした。
2番目に大きいパックを買った。業務用スーパーのだからなかなかの量だ。
「しょうが焼きっつうか、豚のバラ肉が好きなのかな、俺。しゃぶしゃぶとかもだいたいバラでするし」
フライパンをスポンジでこすりながら、ひとり言みたいにおじさんは言った。
キッチンにはいい香りが立ちこめている。しょうがとにんにくと醤油の絶妙なにおい。
「なに? バラ肉って」
「腹の肉だよ」
聞いてもまったくぴんとこないのがさすが料理のできない女子だよなぁと、我ながら思う。
できたてのポテトサラダを木製のボウルに盛って、てっぺんにプチトマトをぎゅうっと押しこんだ。ポテトサラダはあたしの好物だ。あたしのつくるそれが、おいしいかどうかは、またベツとして。
「今度しゃぶしゃぶするか」
いきなり、おじさんが思いついたように言った。
「それ、自分が食べたいだけジャン」
「祈は肉は好きじゃねえの?」
「好きだけど」
「なら、いいジャン」
口調、真似されたジャン。でもおじさんはポーカーフェイスを崩さないままで、やっぱりこいつはどうにも食えない男だなと思った。