「だからおじさんはあたしにごはんつくらせるの?」

「そうだよ」


おじさんは当たり前だってふうに言った。


「おまえのこと、ゆりさんに頼まれたってのもあるけど、こんなキレイなメシが毎日食えるなら預かってもいいって思ったんだ」


そして思い出したようにそう付け足す。

胸がざわざわする。ついでに脇がもぞもぞしだして、最後には全身がむずがゆいような感じになる。


「ヘンなの!」


どうしようもないかゆさを取っ払うように、あたしはわざと強めに言った。


「そうか? きれいなもんは見たくなるだろ、おまえだって」


そうだけど。それにしたってヘンだよ。だって、あたしだったら、キレイなごはんよりもオイシイごはんを食べたいと思うもん。

おじさんはおかしなひとだ。

おかしいけど、おもしろい男だ。


「アトリエ、今度連れてってね。絶対だよ。朝早くても起きるからね」


いつの間にか頭上にあったはずの手のひらはどこかへいってしまっていた。


川の流れの音と同じくらいの音量で、おじさんは

「べつに朝じゃなくてもいいだろ」

と言った。