「元気だな、おまえら」
のろのろ歩いていたおじさんがやがて追いついてきて、仰向けに寝そべるあたしの隣にどかりと座った。
「おじさん。空って、青いんだね」
言いながら、目の前に広がる青に手を伸ばす。当たり前だけど、ぜんぜん届かなくて、なんか笑えた。
「あれは『空色』っていうんだ」
やけにまじめな声だった。
「つまり青ってことでしょ」
「青にもいろんな青があるんだ。たとえば紺色だって、広く言えば青色だろ」
うーん、よくわからない。でもなんとなくわかるような気もして、じっとおじさんの顔を見上げた。どうしていつも不精ひげが生えているんだろうな。
「ねえ。『染色作家』って、なにするの。おじさんはなにしてるひとなの?」
ぽんと頭に浮かんだ疑問を口に出してみた。
考えるよりも先に口が動いていたので、自分でもちょっとびっくりしたけど、おじさんはもっとびっくりしたみたいにあたしを見下ろしていた。
「興味あるか?」
なにに? 染色作家に? それとも、おじさんに? それとももっとほかのなにかのことを言っているのかな?
「うん……少し」
わけがわからないままうなずいていた。だって、おじさんにも、おじさんの職業にも――あるいはそれ以外のなにかだとしても――たぶんすごく、興味があるなって思ったから。