おかしな食卓だ。サユと、あたしと、それからおじさん。みんな他人。まあ、サユはもう家族みたいなものだけど。

おじさんが食べているのは、おかーさんが食べるはずだったオムライスだ。

いい感じ、なんてワケわかんない褒め言葉をくれるサユとは裏腹に、おじさんはオイシイともマズイとも言わない。ただ黙々とスプーンで薄焼き卵を割っては、黄色とオレンジを口のなかへ運ぶだけ。なに考えてるかほんとにわかんない。


食べながら、さっきおじさんとおかーさんから聞いたことを伝えると、サユは興奮したようにきもち前のめりになった。


「てことはこれから、いーちゃんは佐山さんのところで暮らすの?」


そういうことになっている。おかーさんとおじさんの、勝手な取り決めのなかではね。


「えー。大丈夫なの、佐山さん。いーちゃんに変なことしない?」

「ヘンナコトってなんだよ。しねえよ」

「オトナを簡単に信用なんかできませんよう。念のためケータイの番号と住所教えといてよね」


言いながらサユはスプーンを口にくわえ、さっきもらったばかりの名刺を裏向きにして、おじさんにずいっと差し出した。

おじさんは素直に従っていた。ポケットから取り出したボールペンで11ケタの数字と住所を迷いなく書くと、ほらよと名刺を突き返す。

ポケットから当たり前みたいにボールペンが出てくるの、なんだかおもしろいね。


「ていうかさ、佐山さんは女子高生と暮らすことになんの抵抗もないの?」

「あるに決まってんだろ」


あきれたようにおじさんは答えた。

抵抗が、あるのかよ。だったら断ってほしかった。知らない女子高生を預かるのなんか無理だって、いくらおかーさんに頼まれても、強く言ってほしかった。