いつかっていつだろうって、ふと思った。

あたしはいつ大人になるんだろう? 大人って、なんだろう? どうしたらなれるんだろう?

きっと“大人”になっているであろう遠い未来に思いを馳せた。でもぜんぜんリアルに感じられなくて、すぐにやめた。

いいんだ。一瞬一瞬を一生懸命に感じていたら、それが積み重なって、きっとすぐに『いつか』がやってくるから。


そうやって、あたしたちは、いまを生きていく。

不満があっても、苦しくても、痛くても。ただ淡々と、いまを生きていくしかない。

それでも、いつだって大好きな誰かと、大嫌いな誰かといっしょに、生きているんだね。
支えて、支えられて。叱って、叱られて。愛して、愛されて。

コッチもアッチもほんとはないよ。そういうのはいつだって自分が生み出している足かせだってこと、わかったんだ。


世界は変わる。ほんの少しのことで、簡単に変えてゆける。

本当だよ。

だって、あんなに退屈だった世界が、きょうもこんなにいとおしかった。

空はよく晴れていたし、体育のバレーでは試合に勝てたし、英単のテストで満点をとれた。サユがハンバーグをおいしいって言ってくれた。帰りの電車はのんびり座ることができた。よもぎがきょうもかわいかった。

ほんのささいなこと。それでも全部、とても、いとおしいこと。


愛していこう。
愛せなくても、愛していこう。

このつまらない世界を、自分の手で、あなたの手で、愛せる色に染めあげよう。

そうして、こんな世界で、大切な誰かが心穏やかに生きていてくれたら。
おじさんが、遠い空の下で幸せに生きていてくれたら、これ以上に勇気をもらえることはない。

そんなふうに、思うよ。


『和志さん、早く会いたいです。話したいことがたくさんあります。』


だから、あたしはきょうも生きていく。

さみしい32歳がくれた、この色鮮やかな世界で。いとおしいものを胸いっぱいに詰めこんで、自分の色を載せながら、精いっぱい生きていく。





【さみしがりやのホリデイ】END