なんだろう、おじさんからの荷物、いったいなんだろう。
そんなに大きいダンボールじゃなかった。持ってみてもすごく軽い。それでもやっぱり、伝票の差出人の欄には『佐山和志』と書かれていて、それだけで抱えるのがいっぱいいっぱいだ。
テーブルの上にダンボールを置いた。ああ、手が震えている。震えた手のまま、カッターナイフをガムテープの上にすべらせる。箱は拍子抜けするほど簡単に開いた。
わりかしフツウの中身だった。軽さのわりにいろいろ入っていた。
牛のしぐれ煮、フィナンシェ、わんちゃんのおもちゃ、それから手ぬぐい。手ぬぐいはおじさんが染めたものかな。きれいな濃紺だ。
それから手紙もいっしょに入っていた。
『中澤 祈 様』
真っ白の細長い封筒に、神経質な字でそう書いてあった。おじさんの字ってきれいなんだね。知らなかったな。
『中澤 祈 様
元気でやっていますか。ゆりさんやよもぎも元気ですか。俺のほうは禁煙以外はまあまあ順調です。神戸の海は思っていたよりも綺麗で驚きました。なかなか過ごしやすい場所だよ。
岡本先生の知り合いの先生、少々厳しい人です。そんな人に、こないだやっと認めてもらえるような染めものができたので、その手ぬぐいを送ります。まだまだこんな手ぬぐいを染めるので手一杯で、なかなかどうして、職人の世界は一筋縄ではいきません。今更だけど、そういう困難に直面したりもしているよ。
祈、学校生活はどうですか。2学期はもう始まっているね。ちゃんと通えていますか。
いくつか神戸の土産物を一緒に入れておいたので、ゆりさんと食べてください。ただし、よもぎのオモチャは食い物じゃねえぞ。
佐山 和志』
「ぶふっ」
どうして最後だけ言葉遣いが違うんだよ? 思わず笑っちゃったじゃん。
不思議そうにあたしを見上げているよもぎにかわいいカエルのおもちゃをあげると、ものすごく気に入ったようで、早速遊び始めていた。
さすが、おじさんはよもぎの好みをよく知っている。それともよもぎにはわかるのかもしれない、これがおじさんからのプレゼントだってこと。
ああ、でも、そうか。おじさんもがんばっているんだなあ。
おじさんは、どんな顔でこの手紙を書いてくれたのかなあ。