◇
帰宅すると、いつもよもぎは勢いよくじゃれついてくる。かわいいやつだ。ただいまあ、と言うと、おかえりい、と答えてくれるように彼女はしっぽをブンブン振った。
「きょうもよくお留守番できたね、クッキー食べよっか」
タッパーに常備しているわんちゃん用のクッキーを見せると、よもぎはうれしそうに2周まわったあと、すぐにおすわりをした。きょうもしっぽだけありえないくらいに振り回している。やっぱりこの姿は何度見ても笑えるよ。
「よしよし。祈も着替えるね」
クッキーをひとつよもぎにあげてすぐ、制服をソファに脱ぎ捨てた。この瞬間が最高に幸せ。制服って動きにくくて窮屈だから嫌いなんだ。
ハンガーにかかっているジャージに着替えた。髪を青いシュシュでひとつにまとめる。そんでエプロンを装着したら、すぐに夕食の準備に取りかかって……。
突然、インターホンが鳴った。ちょうどエプロンのリボンを結んでいる最中だった。
誰だろうね、待っててね、とよもぎに言い残して玄関に向かう。
いつもどきどきする。インターホンを鳴らしたのはもしかしたらおじさんなんじゃないかって、毎回ヘンな期待をしてしまう。きょうだって、もしかしたら、もしかしたらって。
「――こんにちはー、お届け物です!」
でも、ドアの向こうでニコニコ笑っていたのは、やっぱり宅配便のお兄さんだった。いつもさわやか、元気だなあ。
「ここにサインお願いします」
「はぁい」
「あっ、兵庫県の佐山さんからのお荷物です!」
『中澤』の『中』を書いている途中で手が止まった。
顔を上げる。目が合って、お兄さんが笑顔のまま首をかしげる。はっとしてあわててサインを済ませる。
「ありがとうございましたー」と言って去っていくお兄さんを、いつもはていねいに見送るけど、きょうはそれどころじゃないよ。
帰宅すると、いつもよもぎは勢いよくじゃれついてくる。かわいいやつだ。ただいまあ、と言うと、おかえりい、と答えてくれるように彼女はしっぽをブンブン振った。
「きょうもよくお留守番できたね、クッキー食べよっか」
タッパーに常備しているわんちゃん用のクッキーを見せると、よもぎはうれしそうに2周まわったあと、すぐにおすわりをした。きょうもしっぽだけありえないくらいに振り回している。やっぱりこの姿は何度見ても笑えるよ。
「よしよし。祈も着替えるね」
クッキーをひとつよもぎにあげてすぐ、制服をソファに脱ぎ捨てた。この瞬間が最高に幸せ。制服って動きにくくて窮屈だから嫌いなんだ。
ハンガーにかかっているジャージに着替えた。髪を青いシュシュでひとつにまとめる。そんでエプロンを装着したら、すぐに夕食の準備に取りかかって……。
突然、インターホンが鳴った。ちょうどエプロンのリボンを結んでいる最中だった。
誰だろうね、待っててね、とよもぎに言い残して玄関に向かう。
いつもどきどきする。インターホンを鳴らしたのはもしかしたらおじさんなんじゃないかって、毎回ヘンな期待をしてしまう。きょうだって、もしかしたら、もしかしたらって。
「――こんにちはー、お届け物です!」
でも、ドアの向こうでニコニコ笑っていたのは、やっぱり宅配便のお兄さんだった。いつもさわやか、元気だなあ。
「ここにサインお願いします」
「はぁい」
「あっ、兵庫県の佐山さんからのお荷物です!」
『中澤』の『中』を書いている途中で手が止まった。
顔を上げる。目が合って、お兄さんが笑顔のまま首をかしげる。はっとしてあわててサインを済ませる。
「ありがとうございましたー」と言って去っていくお兄さんを、いつもはていねいに見送るけど、きょうはそれどころじゃないよ。