おじさんの水色の車に乗って、うち――おかーさんとあたしの一軒家――に帰った。
冷蔵庫のなかに特上のお寿司があった。おかーさんが出前をとったらしい。簡単だけどおじさんの歓送会をランチでやるんだって、スゴイ張り切ってて笑えた。おじさんはちょっと恐縮してた。
あと、庭にはよもぎの遊び場ができていたし、リビングには寝床も用意されていた。よもぎはうちで預かることになったんだ。
それが決まったときはすごくうれしかったし、おじさんのぶんも一生懸命かわいがろうって思ったよ。よもぎにさみしい思いはしてほしくない。
「佐山くん。長いこと、本当にありがとうね。お世話になりました。お騒がせ親子のゴタゴタに巻きこんじゃってごめんね」
お寿司が半分くらいなくなったころ、おかーさんが思い出したように言った。最後のほうはおどけた言い方だった。
「いや……それは、俺のほうこそ」
ハマチを食べようとしていたのをいったん止めて、おじさんは答える。
「さみしくなるね」
「ゆりさん、本当にありがとうございました。いろいろ気にかけてくれて……長いあいだ世話になったのは俺のほうです」
「なに言ってんの。これからもジャンジャン世話する予定だから、そこはヨロシクね」
そういう会話はやめてほしいな。ほんとのお別れみたいだから。
黙ってサーモンを口に詰めこんだ。一口でいった。わさびがつんと鼻にくる。