水泳部が休みの月曜だけサユがうちで夕食をとるって習慣は、この1か月ほどでほぼ定着した。あたしのなんかより、サユのお母さんの料理のほうが1億倍はおいしいのに、なぜか彼女はうちでごはんを食べたがる。
でも、サユがそうしたいと言ってくれるし、あたしも会えるのはうれしいから、なにも言わないでいる。
「ほんと、いーちゃんがキッチン立ってるのうける」
なんだって? うけるなよ。
「これでも前よりはずいぶんつくれるようになったんだからね?」
「知ってる。いーちゃんのごはん、なんとか食べられるくらいにはなった」
「サユのオムライスだけチキン全部抜くよ」
それはやめてようと笑いながら、サユがカウンターのこっち側にやって来た。そして、くんくんと、フライパンのなかのチキンライスのにおいをかいだ。
「うーん、いいにおい!」
においはね。
その点でいうと、あのクソまずいカレー以外は、いつだっておいしそうな香りの料理がつくれている、いまのところは。
「それに、いーちゃんの料理っていつも抜群にキレイなんだよねえ」
「キレイ?」
卵をシャカシャカ混ぜながらなんとなしに復唱した。
するとサユは、キッチンに広がっているできかけのサラダや、鍋でコトコト揺れているニンジンのスープ、それからオムライスにかけるためのホワイトソースを順番に指さしていった。なぜか得意げな顔を浮かべながら。
「色彩センスがいいのかなぁ? いーちゃんの料理が食卓にならぶと思わず見とれちゃうくらい、いつも見映えがキレイなの」
なんだそれ。はじめて言われたよ。褒めてんのかな? それとも、味はまずまずだけど……ってな感じに、フォロー入れられてんのかな?